暑い夏は外気の熱が入り込まないように、寒い冬は室内の暖かい空気を外へ逃がさないように、1年を通じて快適に暮らせる家づくりの工夫として「断熱」が注目されています。
ポイントは、快適さだけでなく省エネや冷暖房費の節約にも効果があること。でもそれだけではありません。住み手にとってのメリットは他にもいろいろ。キーワードは「健康」です。
窓や壁がじっとり濡れる「結露」は家の大敵。目に見えない壁の内部で発生する「内部結露」も含めて、万全な対策が必要になります。吸湿性が高くて結露しにくい「セルロースファイバー」「軽量軟質木質繊維ボード」などの断熱材を用いたり、断熱材の室内側に「防湿フィルム」を貼ったり…といったことが結露対策になり、安心して長く暮らせる住まいづくりにつながります。
断熱効果を高める高気密な構造は、防音性能にも優れています。したがって表通りを通行する車の音や近所の工事の物音など、家の外の気になる音を一定の水準以下に抑えることが可能。また建物の内壁や天井に吸音性に優れた断熱材を用いると、隣の部屋や上階からのテレビや掃除機の音が和らげられ、家族が互いに気分よく生活できる空間づくりに役立ちます。
大切な家が不意の火災に見舞われた時でも、断熱材に防火性に優れた「グラスウール」や「ロックウール」などの鉱物系断熱材や、耐熱性能の高い「硬質ウレタンフォーム」などの発砲プラスチック系断熱材が使われていれば、ご近所への影響を極力おさえることができます。また近隣での火災による類焼被害の対策としても効果的。減災というポイントも断熱のメリットの1つと言えます。
とりわけ寒い季節、部屋を移動する時の突然の温度差によって血管が収縮し、脳卒中や脳梗塞を引き起こす原因の1つといわれるヒートショック。断熱性能に優れた家は部屋ごとの温度にムラがなく家全体が寒くなりにくいので、ヒートショックを防ぎ、家族の健康を守ることができます。
ヒートショックが住み手の健康に重大な影響を及ぼし、結露の発生によるカビやダニの繁殖は「シックハウス症候群」の原因にもなります。これらの解決に役立つ「断熱」は、これからますます注目されるでしょう。新しい住まいを考える時、いろいろな「健康」に着目していくと、「住まいの断熱」の大切さについて違った視点で見ることができるかもしれませんね。